2025年10月5~6日、広島市中区のアステールプラザにおいて、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(以後HANWA)と核の無い世界のためのマンハッタンプロジェクトの共催で、「世界核被害者フォーラム」を開催しました。このフォーラムには、核保有国や核産業に対して闘い挑む勇敢な人々を広島にご招聘しました。海外からは録画とメッセージを含む計10か国14名が、日本からは核施設や核被害を受けた地域で活動する人々や専門家など26名が登壇し、「国を超え、核廃絶の声を上げよう」と訴えました。
2025年は米国の広島と長崎の原爆攻撃から80年を迎えましたが、核利用を進めてきた国々と核産業は、放射能による健康への影響の事実を矮小化あるいは隠蔽し、核の軍事利用あるいは「平和」利用を問わず、世界中に核被害者=ヒバクシャを生み出し続けています。そのため、核利用の根底的な廃絶とこれ以上ヒバクシャをつくらない世界を目指し、核被害者と支援者の国際的連帯の場を広島で作り出したいという想いから、開催に至りました。世界の核被害を収めたポスター展と、インド・ジャドゥゴダ・ウラン鉱山写真展も同時開催しました。これらの開催にあたり、日本の3つの助成基金、日米の64団体、そして約560名の日米の方々からご支援と暖かいご声援を、60名以上の有志からご協力をいただきました。登壇者や報道関係者、有志のみなさんを含む参加者数は、10月5日は400名、6日は330名でした。
みなさまに心より感謝を申し上げます。
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(以下HANWA)は、戦争被爆地広島において、核兵器廃絶をめざす活動はもとより、世界中で起こってきた核の被害についての調査や反対運動を展開してきました。私たちは2015年に「世界核被害者フォーラム2015」を広島で開催し、世界の核被害の実態を発信してきました。明らかになったことは、「核と人類は共存できない」という事実でした。このフォーラムは、私たちが世界のヒバクシャとつながり、世界の反核運動とのネットワークを築くきっかけとなりました。
2015年から10年が経過し、今世界各地で戦争が起き、核戦争の危険が高まってきています。私たちHANWAは、ニューヨークで活動する「核のない世界のためのマンハッタン・プロジェクト」とともに、被爆80年の今年10月に「世界核被害者フォーラム2025」を開催いたしました。広島・長崎の核兵器被害の実相、湾岸戦争・イラク戦争における劣化ウラン弾被害、南太平洋における核実験被害、インドやコンゴでのウラン鉱山被害、福島・チェルノブイリにおける原発事故の実態報告など、国内外から核被害者を広島に招き、専門家や運動家とともに核のない未来をめざす取り組みを強めることができました。皆さんのお力でこのプロジェクトを成功に導いていただいたことを心より感謝申し上げます。
前日から来広された海外・国内ゲストをお迎えするレセプション。オープニングは、関洋さん率いる「ゆがふやー」による三線演奏。歓迎のあいさつは、元広島市長秋葉忠利さん。反戦反核の強い思いを語ってくれました。その後、海外ゲストの紹介と食事や交流。10年前のフォーラムにも参加した核被害者との再会、メールでしか連絡していない海外ゲストとの顔合わせ。あっという間に過ぎ去った90分でした。
1日目の午前は、【開会セッション】と【1,広島・長崎原爆被爆】、午後から【2,ウラン採掘・精錬・核燃料製造】と【ウラン鉱山核被害ドキュメンタリー上映会】が行われました。ステージには、在米芸術家の川野ゆきよさんの作品「ファットマン」(その作品の意図は後述)が展示され、会場外ホワイエでは、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の作成した「世界のヒバクシャ」やインドの先住民写真家アシッシ・ビルリ氏による「ジャドゴダ・ウラン鉱山の被害」の写真展が開かれました。
広島市中区のアステールプラザで10年ぶりに核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(以後HANWA)が主宰し、「世界核被害者フォーラム」が開催されました。原爆の被害のみならず、あらゆる核被害を根絶することをめざす世界で活躍する反核活動家の方々が集り、被爆80年の被爆地広島から「国を超え、核廃絶の声を上げよう」と訴えました。
初日の開会セッションで、「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の森滝春子共同代表は、ウラン採掘や核実験の過程で「虐げられ、搾取され、抑圧される立場の民衆が犠牲になってきた」と強調。人類や地球の未来を守るために連帯する必要性を説きました。また、今回の核被害者フォーラムの共催者である「核のないマンハッタンプロジェクト」の井上まり代表より、核被害者フォーラムの歴史的変遷やフォーラムを通してアピールするべきテーマをお伝えしました。
この日は「核サイクル被害現場から」のセッションで、原爆被害を巡り、広島で胎内被爆した韓国原爆被害者協会の李圭烈(イギュヨル)会長が登壇しました。日本政府の植民地政策の末に韓国人が被爆を強いられながら、日本国内に比べ支援が遅れた歴史に言及。原爆を投下した米国も含め「謝罪と賠償を求める」と主張しました。
また、核兵器の原料となるウランの採掘をテーマに討議。インド初のウラン鉱山がある東部ジャドゥゴダ出身の社会活動家、アッシシ・ビルリさん(写真)は、住民の健康被害や地域の分断を報告し、「核暴力の連鎖はウラン採掘から始まる。犠牲を払うのは常に社会的に弱い人たちだ」と訴えました。
◆ 慰霊碑献花 開会に先立ち、原爆慰霊碑への献花を行いました。
開会の言葉で、「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の森滝春子共同代表は、ウラン採掘や核実験の過程で「虐げられ、搾取され、抑圧される立場の民衆が犠牲になってきた」と強調。人類や地球の未来を守るために連帯する必要性を説きました。基調提案では、今回の核被害者フォーラムの共催者である「核のないマンハッタンプロジェクト」の井上まり代表より、核被害者フォーラムの歴史的変遷やフォーラムを通してアピールするべきテーマを明確にしました。基調講演では、中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター長である金崎由美氏より、「原爆投下による無差別大量殺戮を行ったアメリカの責任を問うこととともに、日本のアジアに対する加害責任を問い続けることが、ヒロシマの課題です。そして核による世界のヒバクシャと連帯して核権力と立ち向かうことが求められているのです。」とフォーラムの意義を強調しました。また、平岡敬元広島市長の「歓迎の言葉」や日本被団協の「連帯メッセージ」も代読されました。
森瀧春子
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)共同代表、世界核被害者フォーラム共同代表、ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)運営委員。
井上まり
世界核被害者フォーラム共同代表・核の無い世界のためのマンハッタン・プロジェクト共同創始者 NY在住弁護士
金崎由美
中国新聞平和メディアセンター長
◆ セッション1「核サイクルの被害現場から ~核被害と核植民地主義・核の正義」
【1.広島・長崎原爆被爆】では、被爆者の豊永恵三郎さん、黒い雨第一次訴訟原告団長の高野正明さん、韓国原爆被害者協会会長の李圭烈さん、全国被爆団体二世連絡協議会事務局長の平野克博さん、録画で長崎の被爆体験者訴訟原告団長の岩永千代子さんからの訴えに続いて、原水禁共同議長の金子哲夫さんによる在朝被爆者の問題についてと、被爆者の染色体異常やがん発症などを長年研究されてきた医師で研究者の鎌田七男さんからの発表がありました。広島で胎内被爆した韓国原爆被害者協会の李圭烈(イギュヨル)会長は、日本政府の植民地政策の末に韓国人が被爆を強いられながら、日本国内に比べ支援が遅れた歴史に言及。原爆を投下した米国も含め「謝罪と賠償を求める」と主張しました。
豊永恵三郎
被爆者
高野正明
黒い雨第一次訴訟原告団長
李圭烈
韓国原爆被害者協会会長
平野克博
全国被爆団体二世連絡協議会事務局長
金子哲夫
原水禁共同議長
鎌田七男
医学博士・広島大学名誉教授
◆【ウラン採掘・精錬・核燃料製造】
【2.ウラン採掘・精錬・核燃料製造】では、コンゴ民主共和国のティモテ・ムブヤさん(体調不良で嘉指信雄さんが代わって報告)、アメリカ先住民レオナ・モーガンさん、インド先住民アシッシ・ビルリさんが登壇。米国のマンハッタン計画による核兵器開発に使用されたウランの3分の2は、ベルギー領コンゴ(現在のコンゴ民主共和国)のシンコロブエ鉱山で採掘されたと言われています。現在は閉山されたもののコンゴ政府による厳重な監視と警備によって、報道さえも近寄れない。核の汚染と被害の実態は闇の中です。アメリカのグランドキャニオン近郊のナバホ族の居住区では、多くのウラン鉱山が開発され、放射能による汚染によって先住民の文化と生活が破壊されています。インド・ジャドゴダのウラン鉱山では、放射性廃棄物を含んだ排水が先住民の居住地近くの人造池に捨てられています。周辺住民の健康被害は著しく、死産や異常な出産が後をたちません。アシッシさんの撮影した写真からは、目を覆うばかりの過酷な実態が見えてきます。アッシシさんは、住民の健康被害や地域の分断を報告し、「核暴力の連鎖はウラン採掘から始まる。犠牲を払うのは常に社会的に弱い人たちだ」と訴えました。
嘉指信雄
神戸大学人文学研究科 名誉教授
レオナ・モーガン Leona Morgan
2007年から核植民地主義と闘う
アメリカ先住民オーガナイザー
アッシシ・ビルリ Ashish Birulee
インドのジャドゥゴダ放射能反対同盟
フォトジャーナリスト
フィリップ・ハリソン・ジュニア
Phillip Harrison Jr.
アメリカナバホ族(ディネ)の
元ウラン鉱山労働者(録画)
玉山ともよ
独立研究者
振津かつみ
兵庫医科大学非常勤講師
◆【ウラン採掘・精錬・核燃料製造】
ゴールデン・ミサビコ Golden Misabiko 上映会・シュリプラカッシュ監督・トーク
【3.ウラン鉱山核被害ドキュメンタリー上映会】
コンゴの人権活動家ゴールデンミサビコをインドのシュリプラカッシュ監督が取材し撮影したドキュメンタリーです。ミサビコ氏は、シンコロブエ鉱山などの違法な採掘による人権侵害などの調査報告を行い、当局によって逮捕・投獄されました。現在、不明な死をとげたとの情報が届いています。
2025年10月5日 世界核被害者フォーラム 1日目
【ファットマン】
この作品はファットマンという長崎原爆の形をなぞっていて、着物を髪で縫い合わせて作っています。被爆者の祖母の着物と被ばく3世の私の髪で作りました。
松尾芭蕉の「奥の細道」を蕪村が書写したものを私が書きなぞってファットマンの肌を埋めました。奥の細道は、その旅の始まり部分で福島の被災地域・汚染地域を芭蕉が1600年代に旅した様子が表現されています。芭蕉が歌った俳句、この島国に住む人間が大事にしてきた文化を象徴する風景が核によって根本的に変えられたことに無関心で居続ける社会構造に対する 福島の、広島の死者の怨み(うらみ)を込めました。追悼と怨みの 静かな怒りの作品です。福島の惨状とその復興政策のあり方を見る中で、私はラコタインディアンの大量虐殺についてラコタインディアンチーフが語った言葉「人々の夢はここで死んだ。美しい夢だった。」「世界の中の輪はくずれちりじりになった。もはや中心はなく神木(しんぼく)は枯れた。」という言葉を福島の嘆きと重ねて何度も読み返すことになりました。地域の地来(ちらい)の繋がり、その地域の自然形態を代々に渡って理解し、共存している生存の喜び、その苦しみ、共にした文化、何もかもが消されていく過程で、お金が問題を解決する唯一の手段と考える社会へと変えられている過程で、福島の復興はその姿をあまりにも露骨に具現化します。そして生まれた現代の社会で機能するには「無関心」である必要がありました。精神はよどみ、地来の文化を持った民族の浄化が完成されようとしている中で私は、武藤類子さんが言う「ちゃんと絶望する」私自身のプロセスをこの作品に表したようにも思います。もう一度1945年8月6日に戻って、全てが変えられてしまった、変えられていく世界で人間であり続ける。人とのつながりの基本的な、森瀧市郎先生が言われた「元の」広島を絶望の中から継承(けいしょう)したいという最後の叫びなのだと思います。
福島復興研究仲間の野池元基さんが1847年に起こった善光寺地震について、その復興の姿が残っていることを最近記事にされました。(渡部尚志著『日本人は災害からどう復興したか』からの引用)そこには、村人同士、近隣の村同士、領主と領民、既存の縁を強める復興だったとあります。乞食になった無縁の人たちも「縁と無縁の双方(そうほう)の助け合い」で険しい道のりが歩めたと。また災害ビジネスを狙い物価を釣り上げた者は打ちこわしの制裁を受けています。百姓たちの世直し行動・現実の様子が書き留められているのです。そして今日、2025年の、原爆が落とされ根本的に変わってしまったこの世界の「世直し」とは。それは絶望的なものになことを、ガザの姿が我々にまざまざと見せています。このまま無関心でいることもカラカラ歯車が外れ、音がどんどん大きくなってきました。もしこの先に森瀧先生の提示された『愛の文化』を探求するのだったら善光寺地震の復興で見られた「打ちこわし」、フランツ・ファノンが「地に呪われたる者」ではっきりと書いている脱植民地主義運動の覚悟。それを私は、自分自身の覚悟と恐怖の中でこの反核アート作品に込めたいと思います。
【核実験と核植民地主義】では、亡父が高知県室戸のマグロ漁船で働いていたビキニ被ばく船員訴訟原告団長の下本節子さんと、マーシャル諸島出身の家庭に育ったマルシーナ・ラングリーンさんが、核実験の影響について発言しました。放射線医科学者で放射性微粒子に詳しい星正治広島大学名誉教授は、カザフスタンの核実験とウラン鉱山の影響を解説しました。
コーディネーター
高橋博子(たかはし・ひろこ)
奈良大学文学部史学科教授、日本学術会議連携会員、日本平和学会理事、広島平和記念資料館資料調査研究会委員、第五福竜丸平和協会専門委員、日本パグウォッシュ会議運営委員。同志社大学大学院修了。
コーディネーター
竹峰誠一郎(たけみね・せいいちろう)
明星大学人文学部の教授であり、社会学を専門とする研究者である。グローバル・ヒバクシャの視点から、核兵器禁止条約、マーシャル諸島の核実験被害、そして「核の正義」に関する国際的なネットワーク構築などをテーマに研究を行っている。
スピーカー下本節子(しももと・せつこ)
ビキニ被爆船員訴訟原告団長として日本政府に損失補償を求める裁判を続けている。
スピーカー マルシーナ・ラングリーン
マーシャリーズ教育イニシアティブ(MEI)オペレーション・コーディネーター。
スピーカー 星正治(ほし・まさはる)
広大原爆放射線医科学研究所名誉教授。
放射線医科学を専門とし、チェルノブイリなどの核実験・事故、カザフスタンのウラン採掘による核被害の調査にも携わる。
【4.原発事故・原発労働】では、原発事故被災者で小学校教員の菊池ゆかりさん、市民放射能測定室のネットワーク団体「みんなのデータサイト」の中村奈保子さん、福島第一原発の被曝労働問題に詳しい東京新聞の片山夏子記者、福島原発事故被害から健康と暮らしを守る会アドバイザーでチェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西共同代表の振津かつみ医師、「避難の権利」を求める全国避難者の会共同代表の宇野朗子さんが発表しました。福島県飯舘村原発事故被害者訴訟原告団長の菅野哲さんと、3.11子ども甲状腺がん裁判原告の方、チェルノブイリ核惨事の被曝者で「移住者の会」代表のジャンナ・フィロメンコさんは、録画やメッセージを通して現在も続く影響について訴えました。
コーディネーター
木原省治(きはら・しょうじ)
被爆二世、1978年の米国訪問をきっかけに反原発運動を始め「原発はごめんだヒロシマ市民の会」代表。「中国地方反原発反火電等住民運動連絡会議」事務局長、広島県原水爆禁止協議会常任理事等を歴任。
コーディネーター
宇野朗子(うの・さえこ)
福島市より避難、京都府在住。「避難の権利」を求める全国避難者の会共同代表。東電刑事訴訟支援団。原発賠償京都訴訟原告など。個人・組織・社会の変革をうみだすNPO法人 U Journey共同代表
スピーカー
菊池ゆかり(きくちゆかり)
福島県石川町の小学校教諭で、福島原発事故後、放射線や人権に関する教育実践を続けている。
スピーカー
中村奈保子(なかむら・なほこ)
東日本大震災・福島原発事故を機に、市民による放射能測定に関わる。12年、「みんなのデータサイト」の立ち上げから現在までプロジェクトに携わる。
スピーカー
片山 夏子(かたやま・なつこ)
中日新聞東京本社の福島特別支局記者。2011年8月から作業員の日常や家族への思いなどを綴った「ふくしま作業員日誌」を連載し、「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」大賞を受賞。
スピーカー
振津かつみ(ふりつかつみ)
臨床医として原爆被爆者の治療に携わる。大阪大学医学系研究科(放射線生物学・医科遺伝学)で博士号取得。兵庫医科大学非常勤講師。学生時代から原水禁運動に参加し世界の核被害者と連帯。チェルノブイリ原発事故被災者支援に30余年携わる。
【核廃棄物の処理・劣化ウラン兵器】では、イラクで劣化ウラン被害者の治療に携わるジャナン・ハッサン医師と、米国の核施設からの影響に苦悩する先住民族のリーダーから録画で報告がありました。「核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団」事務局長の山田清彦さんは青森県六ケ所村の諸問題を、南アフリカ・ケープタウン在住の環境正義運動家のリディア・ピーターセンさんは現地の核問題を、佐藤真紀さんは劣化ウラン被害者について訴え、アンゲリカ・クラウセン医師は、劣化ウランの健康被害とドイツの脱原発政策を発表しました。
コーディネーター
森滝春子(もりたきはるこ)
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)共同代表、世界核被害者フォーラム共同代表、ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)運営委員。
コーディネーター
松久保 肇(まつくぼはじめ)
原子力資料情報室事務局長。16年法政大学大学院公共政策研究科修士課程修了。金融機関勤務を経て12年より原子力資料情報室研究員。17年より現職。22年より経済産業省・原子力小委員会委員。
スピーカー
佐藤真紀(さとう・まき)
1997-2004年、日本国際ボランティアセンター職員。イラク戦争で緊急人道支援を指揮したのち、劣化ウラン弾の放射能によると思われる小児がん救済のためのネットワークJIM-NETの事務局長を務めた。
スピーカー
山田清彦(やまだ・きよひこ)
核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団事務局長。93年に提訴した再処理工場については、現在も青森地裁で係争中。他に、核燃料や核廃棄物の搬入に反対する「核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会」の事務局次長。
スピーカー
リディア・ピーターセン
南アフリカ・ケープタウン在住。環境正義運動家であり、南アフリカ気候正義憲章運動のナショナル・キャンペーン・セクレタリー、アフリカ環境法研究所(AIEL)のコミュニティ・リエゾンとして活躍。
スピーカー
アンジェリカ・クラウゼン
医学博士。精神医学と心理療法の常駐医師平和学で修士号を取得。IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部の共同代表。精神医学と心理療法の専門医として戦争やトラウマ、拷問の被害者の治療に携わる。
◆核被害者である医科学者として
【核被害者である医科学者として】では、ティルマン・ラフ医師がオーストラリアの核実験の影響と、同国の原子力潜水艦と原発導入の最新の動向について解説しました。
特別講演
ティルマン・ラフ Tilman Ruff
「核戦争防止のための国際医師会議」(1985年ノーベル平和賞)の前共同会長理事。核兵器廃絶国際キャンペーンICAN(2017年ノーベル平和賞)の国際およびオーストラリアの議長、共同創始者、オーストラリア委員会メンバー、国際運営グループ共同代表。核兵器禁止条約科学ネットワーク会員。メルボルン大学人口・グローバルヘルス学部名誉首席研究員。
◆核被害者の権利と補償の確立、核利用の根絶に向けて
【核被害者の権利と補償の確立、核利用の根絶に向けて】
というテーマでラウンドテーブルを行いました。マーシャル諸島出身のベネティック・カブア・マディソンさんと広島出身のユースの高垣慶太さんを交えて、海外ゲストとともに国境や世代を超えて核の無い世界をめざすための議論を行いました。
コーディネーター
井上まり(開会セッションに記載)
ニューヨーク州弁護士。福島での原発事故後は核廃絶運動に積極的に関わり、核のない社会実現に向けて米国の連邦議員や地方議員、平和・環境団体に働きかけを行う。「核の無い世界のためのマンハッタン・プロジェクト」共同創始者。
川野ゆきよ(かわの)
祖父は爆心地から近距離の中国電力本社(中区小町)で被爆した数少ない生存者。現在被爆3世のアーティストとして米国オレゴン州で活躍中。「核の無い世界のためのマンハッタン・プロジェクト」会員。バーモント美術学校で修士号取得。作品はアメリカ、日本、オーストラリアで展示された。全米各地の大学、研究所で講演。HANWA運営委員
スピーカー
ベネティック・カブア・マディソン
マーマーシャリーズ教育イニシアティブ(MEI)事務局長。
マーシャル諸島出身者が最も多く住むアメリカの南部のアカンソー州スプリングデール市に所在する非営利団体MEIの事務局長。海抜上昇の危機などを理由に、6歳の時にマーシャル諸島のマジュロからアメリカへ移住。MEIに初めて所属した2014年には、アーカンソー州在住のマーシャル諸島出身者の口述歴史の収集と翻訳作業に関わった。2019年にMEIへ復帰し、核と気候問題の意識を高める活動を主導した。2022年に事務局長に就任してからは、祖国の消去できない核実験の影響と核正義について意識を高める活動を主導している。核実験の影響について、国連総会、日本、韓国、スイス、ドイツ、カザフスタンなどの会議で発言したことがある。
◆閉会セッション
最後に、核問題を人権問題としてとらえ、被ばくをしない権利が私たちにはあり、「核と人類は共存できない」ことを確認した「世界核被害者の権利宣言2025」を広島宣言と共に採択しました。核被害者の権利・補償確立と核廃絶実現に向けて、核被害者の権利宣言として、国際社会及び政府や国会・議会などへの具体的な政策提言に活用されることを期待します。
<以下、採択された宣言文を紹介します。>
世界核被害者フォーラム広島宣言について
2025年 10月 6日
(前文)
1. われわれは、ウクライナ戦争、ガザでのジェノサイド、中東危機の中で、核兵器使用や原発などの核施設への攻撃の威嚇が地域戦争の手段とされ、米英政府が劣化ウラン弾をウクライナに供与したりするなど、いま世界は核戦争や更なる核汚染への危機が高まっていることを懸念する。戦争がなくならない限り、核兵器の使用の衝動と核戦争の危険性は高まるばかりである。われわれは、今こそ、核被害者の声を世界に届けるときであると考え、アメリカによる原爆投下 80周年に当たる 2025年の 10月 5日から 6日に、ここ広島に集った。
2. われわれは、核被害者=ヒバクシャを以下のように定義する。すなわち、原爆の被爆者、核実験の被害者、核物質を使った人体実験の被害者、核の軍事利用と民生利用の別を問わず、ウランの採掘・精錬・濃縮の活動、核の開発・利用・廃棄などの核兵器関連活動と原発・核燃料サイクルの全過程における労働と環境放射能汚染によるヒバクシャ、原発事故被害者、放射性廃棄物の劣化ウランを用いた兵器によるヒバクシャなど、の放射線被曝と放射能汚染による被害者すべてを含む。核時代を終わらせない限り、人類はいつでも核被害者=ヒバクシャになりうることを認識して、核と人類は共存できないことをあらためて確認した。
3. われわれは、ウラン採掘や精錬、核実験、核廃棄物の投棄が、いまも続く植民地支配、差別抑圧の下で行われてきたことを確認した。原発・核燃料サイクル施設の地方への設置と、原発下請け労働者への被ばくの押し付けなど、不平等・差別・抑圧・搾取の社会構造の下に核利用が成り立っていることを確認した。とりわけ、世界中で先住民に対して、先住民を政策決定過程から除外し、先住民族の権利-先祖代々の土地と関連する諸権利を含む-を侵害し、自らの権利や集団の権利を主張すると弾圧し、先住民にとってはジェノサイドになりうる被曝という暴力を強要するという「核植民地主 義」の歴史と現状を確認した。環境を放射能で汚染され、人間生活の基盤をも奪われた核被害者を日々増やし続けていることを確認した。
4. われわれは、核被害は、核被害者の健康のみならず、被害者と家族の生活をも脅かし、コミュニティ全体にも及び、社会的、文化的な被害をももたらしていることを確認した。
5. われわれは、核被害が次世代以降の健康にも被害を及ぼす可能性があることを認識した。また、社会的、文化的な被害は、次世代以降にも及んでいることを確認した。そして、核利用によって、人類の歴史よりも長い寿命の核種を含む核廃棄物が「負の遺産」として将来世代に残されてしまったことを確認した。
6. われわれは、核被害が、人類のみならず、環境の放射能汚染によって、人を含む生態系全体に被害を及ぼす可能性を確認した。
7. われわれは、2013年にオスロ、2014年にナジャリットとウィーンで開かれた「核兵器の非人道的影響に関する国際会議」の結果として、核兵器爆発が環境、気候、人間の健康、福祉、社会に破滅的な影響をもたらし人類の生存さえ脅かし、対処が不可能であるという認識が国際的に共有されたことを確認した。
8. われわれは、核加害者を以下のように定義する。核武装国をはじめ、核の利⽤により、⼈間の⽣存の基盤を破壊し、⽣き物すべての⽣存を侵害する原因を⽣み出した者、軍産官学複合体やその構成員、およびこれを⽀援する国家、国際原子力機関(IAEA)や国連科学委員会(UNSCEAR)などの国連組織と、原子力推進の立場の科学者による国際放射線防護委員会 (ICRP)などのこれまで放射線被曝による被害について過小評価して原発事故などの本当の影響を隠蔽してきた機関、核エネルギー政策を推進した国家および放射能汚染を引き起こした事業者と原発など核施設のメーカーの株主、債権者を含む。われわれは、核加害者が被害者への賠償責任を含めて、加害についての責任を負うことを強く要求する。また、原発輸出やウラン輸入を含む原子力関連産業の推奨・支援・投資は、人権侵害と環境破壊をもたらす危険があることを認識するよう主張する。
9. われわれは、核加害者が核(原子力)産業の利益を擁護するために、放射線被ばくのリスクを過小評価してきた長い歴史に対し、強く批判する。われわれは、核被害者や核被災地および、次世代を含む全ての人々と地球環境を守る立場に寄り添った、放射線リスク評価の採用を求める。次世代への影響については、動物実験などの基礎研究の結果から、人間にも「遺伝的影響は否定できない」「危険性がある」ことは明らかである。また、これ以下なら人体に影響はないという放射線被ばくの「しきい値」が存在せず、いかなる線量であれ後障害の健康リスクがあることを認識した。このことは、例えば、世界の核施設労働者の疫学調査「INWORKS」などで、ますます明らかになっている。内部被ばくは被ばく線量推定が難しいことなどのため、加害者は被ばく健康影響を認めず、無視し、切り捨てようとしていることを認識した。
10. われわれは、2021年 1月に核兵器禁止条約が発効し、核兵器の国際法での違法性と、締約国による核被害者の救済と環境回復の義務を定めたことを歓迎する。核兵器禁止条約は、核戦争による非人道性の極みを訴え闘ってきた原爆被爆者、核実験被害者たちの体験と、それを共有する運動の上に成立した。しかし、世界各地の核被害者の救済なくして核廃絶はないという被爆者らの訴えに反し、核被害者を「核兵器の使用もしくは実験」によって影響を受けた者だけであるかのように記述されているため、ウランの採掘、精錬、濃縮から核廃棄物までを含む核兵器関連の全てのヒバクシャ、とりわけ先住民の被害が切り捨てられようとしていることを憂慮する。また、原子力の「平和利用」を奪い得ない権利と定めていることは容認できない。そして、加害者が明記されず、加害責任が明確にされていないことなどの致命的な問題も確認した。このような問題を核被害者とともに、世界の人々の力で正し、核兵器禁止と核被害者支援の世界の運動をより強めていくことが重要だと主張する。
11. われわれは、2024 年 3 月に国際原子力機関(IAEA)主導の第 1 回原子力サミットが開催され、非原発保有国を含む 32 カ国が原発推進に向けて協力することを宣言したこと、さらに、世界中の原子力ムラが気候変動枠組条約締約国会議において原子力は気候危機の解決策であると喧伝していること、また、核武装国であるアメリカや核実験被害国であるカザフスタンなどでウラン採掘などが活発になっていること、またさらに、ウラン濃縮を含む原子力技術を希求するグローバルサウスの国が増えていることを憂慮する。われわれは、原子炉からの使用済み核燃料に、核兵器に転用可能なプルトニウムなどの核物質が含まれており、テロや盗難、核拡散のリスクがあること、さらに原子力技術の軍事転用の可能性があることも懸念する。
12. われわれは、2023年 8月 24日から開始された東京電力の福島第一原子力発電所からの放射性核種を含む汚染水(放射性廃水)の太平洋への放出が、少なくとも次の 30 年も続くことについて、予防原則に基づき、即時の放出停止を求める。放射性廃水の海洋放出は、太平洋を共有する全ての人々、とりわけ日本の漁業者及び太平洋諸島に暮らす多くの先住民の健康・生活・文化への権利を侵害するものである。
13. われわれは、東京原爆訴訟判決(1963年 12月)が米軍の原爆投下は国際法違反と認定したこと、国際司法裁判所が「厳格かつ実効的な国際管理のもとで、全面的な核軍縮に向けた交渉を誠実に行い、その交渉を完結させる義務がある」と勧告的意見(1996 年 7月)を表明したことを認識している。この勧告的意見に基づき、2014 年 4 月、核実験の被害を受けたマーシャル諸島の人々の政府が、国際司法裁判所に9つの核武装国に対して提訴したが、2016年 10月に訴えが退けられたことは非常に遺憾である。その後も、マーシャル諸島の人々は国連機関で核実験の負の遺産について声を上げ続 け、その結果、マーシャル諸島の核実験の影響に関する 51/35決議案が国連人権理事会で採択され(2022年 10月)、それに基づいた検証をもとに、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が国連人権理事会への報告書で、アメリカ政府に、過去、現在、将来にわたる人権侵害に対する正式の謝罪と賠償を促したこと、また、関連記録の全面公開を求め、核の負の遺産による人権侵害を防ぐために、全ての汚染地域のモニタリングと環境回復など、マーシャル政府が「核の正義」に基づく対策を行えるように支援することを求めたことを歓迎する。
14. 朝鮮半島出身の原爆被爆者には、朝鮮が日本の植民地であったことによって故国では生活していけなくなったため日本に渡り、あるいは強制労働者として日本に連行され、広島や長崎で原爆被害に遭ったという背景があったことを忘れてはならない。1967年に発足した韓国原爆被害者協会が、原爆を投下したアメリカ政府の加害責任、原爆製造関与のアメリカの企業の加害責任、日本政府の加害責任、自国の被爆者を援護すべき責任を放置した韓国政府の責任を追及してきたことを強く支持する。われわれはさらに、広 島・長崎で被爆した後、朝鮮半島の北側(現在の朝鮮民主主義人民共和国)に帰国した人たちに対して、日本政府が被爆者援護を放置し、無援護のままの状況にある課題が、同国との国交回復も含め、一刻も早く解決されることを求める。
15. われわれは、2026年 11月にニューヨーク市で、韓国の被爆者と支援者が国際民衆法廷を開催し、アメリカ政府に対して原爆投下の国際法上の違法性を問い、加害責任と謝罪を追求する行動を、強く支持する。
16. われわれは、日本で核被災地の人々が核被害に対する補償・保障・保証を求めて、被爆体験者訴訟、黒い雨原爆被害追加訴訟、ビキニ被ばく船員訴訟、被爆 2世訴訟、ALPS処理汚染水差止訴訟、311子ども甲状腺がん裁判、原発事故被害者・避難者・原発被ばく労働者訴訟などの、国や核加害者を裁判に訴える行動に連帯する。われわれは、また、同様の行動を求めている世界の核被災地の人々と連帯する。
17. われわれは、第 1 回核被害者世界大会が核保有国と原子力産業の犯罪責任を追及し(1987年ニューヨーク決議)、また軍産複合体に損害補償の責任を負わせるとしたこと(1992年ベルリン決議)、先住民らが参加した世界ウラン公聴会が、諸政府、その責任ある部署、国際企業やその他の企業、組織、共同体、個人に対し、核開発による身体的、文化的ジェノサイドから守るための先住民固有の自己決定権を認識し、被害の責任を負うことを約束して被害者に対して補償を行うことを求めたこと(1992年ザルツブルグ宣 言)を想起する。さらに、われわれは、「原爆投下を裁く国際民衆法廷・広島」がトルーマンを含む被告たち 15名全員の有罪を確定したこと(2007年 7月)を確認する。
18. われわれは、加害者が責任を認めて謝罪し、過去の被害への補償をし、核被害者と核被災地への社会的保障を提供し、これ以上核被害を地球上に起こさないことを保証することを求める。また、これまでの加害行為を反省することを強く要求する。
19. われわれは、核汚染の被害を受けた先住民の諸権利を守るために、先住民の自己決定権や、環境や発展に関する諸権利などを定めた「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を各国政府が遵守することを求める。
20. 核被害こそが最大の環境破壊であることをわれわれは認識した。
1998年に採択したオーフス条約(環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における市民参画、司法へのアクセスに関する条約)に留意し、クリーンで健康な環境へのアクセス(利用可能にすること)、情報へのアクセス、意思決定における市民参画、司法へのアクセスは普遍的人権であることを確認する。われわれは、2021 年 10 月に国連人権理事会がクリーンで健康的かつ持続可能な環境をもつことが普遍的人権であることを認識したこと、また、翌年の 2022年 7月に国連総会が、クリーンで健康な環境へのアクセスは普遍的人権であると宣言する決議を採択し、日本や、アメリカなどの核武装国を含む 161 の国と地域が支持したことを歓迎する。この決議は、全ての人にとって健康な環境を守るための取り組みを拡大するよう、各国政府、機関や組織、そして企業に求めている。われわれは政府や国際組織・国内組織、企業に対し、全ての人にとって健康な環境を約束するよう要求する。
21. われわれは、日本国憲法前文の「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」を想起する。
22. 原発・核燃料サイクルを「核の平和利用」と言うのは欺瞞である。
1953年、アメリカのアイゼンハワー大統領は、核兵器開発をより一層推し進め、軍事用原子炉を発電に転用した原発による経済的利潤の追及(核の民生利用)でも国際的優位を目指し、国連での「平和のための核(アトムズ・フォー・ピース)」宣言を行った。われわれは、「核の軍事利用」と「核の民生利用」が原子力産業を通じて密接につながっていること、さらに劣化ウランを使用した放射能兵器など核利用の全段階で大量の核被害者を生み出してきたことを認識した。われわれは、ウラン採掘から核廃棄物管理に至るまで、核燃料の製造や原子力発電、再処理を含め、「軍事」「民生」を問わず、医療用を除き、全ての核利用に関連する全ての過程を直ちに中止し、廃棄することを求める。
23. われわれは、劣化ウランを利用した兵器の製造・保有・使用を禁止することを求める。
24. われわれは、核の利用がある限り放射能災害の発生を防ぐことはできず、増え続ける核廃棄物の処理・処分の見通しは全く立たないうえ、核汚染は長期にわたり、不可逆的なものであり、環境の原状回復は不可能ということから、人類は核エネルギーを使ってはならないと認識した。
25. われわれは、今回の世界核被害者フォーラムを契機として、核被害者の情報を共有し、芸術などを含むさまざまな方法やメディアなどの媒体で発信し、共に連帯して闘っていくことを確認した。
26. われわれは、2015年の世界核被害者フォーラムとこの 2025 年の世界核被害者フォーラムの成果をもとに、以下の世界核被害者の権利宣言 2025を世界に発信するため、広島宣言を採択する。
世界核被害者の権利宣言 2025
1. この宣言の目的
1) 世界核被害者の権利宣言 2025は、核被害者の権利と補償確立に向けた、核被害者の人権宣言である。
2) 核の加害者の責任を厳しく問い、核被害者の権利・補償の確立と核廃絶をめざす運動の指針を示す。
3) 核被害者の権利と補償を確立するため、多分野にわたる具体的政策を提言し、その実現に向けて、国際社会及び各国政府、議会への働きかけに活用する。
4) 核兵器や原発、ウランや核廃棄物、核燃料サイクルやそれを維持する政治的抑圧などの影響を受けた多様な核被災地やの核被害者の声を反映させ、核被害者自身及び核被害者と連帯する様々な人々との協働で作成し確認する。
2. 核被害者の定義
原爆の被爆者、核実験の被害者、核物質を使った人体実験の被害者、核の軍事利用と民生利用の別を問わず、ウランの採掘・精錬・濃縮の活動、核の開発・利用・廃棄などの核兵器関連活動と原発・核燃料サイクルの全過程における労働と環境放射能汚染によるヒバクシャ、原発事故被害者、放射性廃棄物の劣化ウランを用いた兵器によるヒバクシャなど、の放射線被曝と放射能汚染による被害者すべてを含む。
3. 基本的権利
核時代を終わらせない限り人類はいつでも核被害者=ヒバクシャになりうる。核と人類は共存できないことを確認する。
現在と将来の核被害を防ぐために全ての人々は以下のことを求める権利を有する。
1 自然放射線および合意の上での医療用放射線以外の放射線被曝を受けないこと。
2 被曝労働を強制しないこと。被曝労働が回避できない場合には、最小化すること。
3 医療被曝を必要最小限に留めること。
4 放射線被ばくの危険性について、意図的な誤った情報ではなく正確な情報を学校教育、社会教育を通して提供すること。情報には以下のことを含めるべきである。放射線被ばくは、どんなに低い線量であっても線量に応じた健康リスクがあること。特に子ど
もや胎児は大人に比べて放射線被ばくへの感受性が桁違いに高いこと。また、生殖健康
(リプロダクティブ・ヘルス)において、現在あるいは将来、妊娠、出産、新生児ケアに重要な役割を果たす母体を担う人に対する放射線被ばくの影響には、特別の配慮が必要であること。従って、現在、原子力産業が採用している「成人男性モデル」のみによる人体への被ばく健康影響の基準は、子どもや女性への健康影響を考慮していない点においても決定的に誤っていること。
5 事故時はもちろん、平常時においても、核施設の環境リスク評価が被ばく防護策や治療法に関する情報と共に透明性をもって公開されること。
6 関連する政策の意思決定プロセス(過程)に参加すること。
利害関係者(ステークホルダー)と権利者の意思決定過程への参加は、関連する国の計画や政策を策定する際に、参加しやすく、包括的で、差別的ではなく、透明性のあるものでなければならない。
インフォームド・コンセント(利害関係者や権利者の十分な情報を得た上での合意)は、利害関係者が関連する国や地方の政策に関わるリスクの性質と程度を理解するために必要な知識や手段、通知とパブリックコメント(公開の意見募集)の機会を提供しなければならない。
政策の意思決定に同意するかについては、核正義への政策及び実践を保障するための監視とアドボカシー(権利擁護)を必要とし、その同意は強要してはならない。
核正義とは、核被害に関する情報公開、核被害者として認めること、加害者による謝罪、加害責任の追及、核被害者の救済と補償、汚染地域の環境修復、再発防止、核廃絶を含む。
7 被ばくした個人や地域の被害に関する生きた経験と証言を正当に評価し、その調査結果を公的な文献や、被ばくと救済に関する政策に取り入れること。
8 予防原則と人道的観点に基づく関連政策を策定すること。
9 核施設から生成される高レベル放射性廃棄物を保管する最終処分場がないため、核施設の建築、稼働または再稼働を拒否すること。
10 将来世代にこれ以上の核被害をもたらさないために、高レベル放射性廃棄物、除染土、汚染水などの放射性廃棄物の処理は、現世代の責任において行い、将来世代に責任を負わせないこと。
4. 核被害者の健康と生活の保障のため
a. 医療を受ける権利
現在、疾病を有しているか否かに関わらず、「被ばくの事実」(被ばく線量に関わらず)と「被ばくによる健康リスクの可能性」があれば、核被害者として健康を守り、医療を受けることのできる権 利。
これは「特定の放射線の曝露態様の下にあったこと、そしてその曝露態様が放射能により健康被害が生ずることを否定することができないものであったことを立証することで足りる(2021年 7月 14日
広島高等裁判所「黒い雨」訴訟控訴審判決 151頁が被爆者援護法 1
条 3号の解釈として示した規範)」を基にする基準である。
医療を受ける前に、十分に情報を提供し、同意が自由にできるよう保障すること。
治療の過程で研究が行われる場合は、被験者を保護するための倫理規定及び研究基準を遵守すること。
b. 救済をうける権利
c. 生命と健康に対する権利
d. 関連する政策の決定プロセスに参加する権利を保障すること。
e. 核被害者の権利が侵害された場合に、国内および国際レベルの双方で、効果的な司法もしくはその他の適切な支援を受ける権利
5. 先住民族の権利
a. 先住⺠への差別・抑圧、植⺠地⽀配をなくす闘いへの⽀持と、先住⺠族の生存権と自己決定権の尊重が不可分であるとの視点に⽴った要求を求めるために、「先住民族の権利に関する国連宣言」は核被害者の権利の確立における最低基準である。
6. 労働者被曝(職業被曝)
a. 労災補償、放射線防護・健康管理、被曝リスクに関する情報を受ける権利。
すでに⽣じている被害の労災補償、⽇常の被曝管理及び被曝線量を最小限にする放射線防護・健康管理、放射線防護や被曝リスクに関する教育・研修を受ける権利。
b. 被曝線量の測定と定期的な健康診断を受ける権利。
原則的には被曝線量を測定・管理されながら労働するという被曝労働者の特殊な⽴場での権利の⾔及が必要である。放射線被曝を伴なう労働について、日々の被曝線量を完全に把握し、その結果と健康に対する影響について、十分な情報と知識を与えられる。健康に対する影響を調査するために、労働者は、定期的な健康診断を受け る。
c. 被曝管理と長期的な健康管理を受ける権利。
廃炉や廃棄物管理、「除染」や輸送などの処分・管理に伴う労働者の被曝の影響と健康管理の必要性は長期にわたって残るため、離職後も生涯にわたって健康管理と医療を受ける権利を有する。その権利を証明する公的機関が発行した証明書を所持する権利を有する。
d. 危険な放射線被曝を伴う労働の危険性に関する情報を知る権利と被曝労働を拒否する権利
危険な放射線被曝を伴なう労働について、事前にその危険性について十分な情報と知識を与えられる権利を有する。労働者が「許容」被曝線量を受けた場合の死亡率や障害発生率などのリスクが事前に公表されなければならない。当該労働に従事するか否かは、その都度、労働者の自由な意思決定に委ねられる。
e. 被曝労働を拒否する権利と差別されない権利
被曝労働を拒否した場合と被ばく限度に達した場合に、当事者の要求をもとに「代替え職場」での仕事を保障すること。労働を拒否した場合でも、労動契約上、何らの不利益を受けない。軍人か民間人か、元請けか下請けかなどの雇用形態にかかわらず、差別されない権利を有する。原発労働において、重層下請け構造のような被曝を押し付ける構造は許されず、これを無くしていかなければならな い。無くすまでの間においても、元請企業は、末端の労働者の権利も補償することに誠実に取り組まなければならない。
f. 関連する政策の決定プロセスに参加する権利を保障すること。
g. 権利を主張した場合の弾圧、差別、解雇、報復などの不当な罰則の対象にならないことを保障すること。
h. 事業者は、被曝事故があった場合、これを正確に記録し、保管しなければならない。
i. 事業者は、被曝記録の作成及び管理の責任者を明確にし、ヒバクシャの求めに応じ、何時でもこれを開示しなければならない。
j. 以上の諸項目に違反して、労働者を働かせた使用者は、民事上の損害賠償責任を負うとともに、行政罰、刑事罰を科せられる。
7. 住民被ばく(⼀般公衆の被ばく。ウラン関連産業及び核施設の周辺住民、核実験風下住民、原発を含む核施設の重大事故時の周辺及び風下住民、等を含む。)
放射線被ばくをした全ての人は以下の権利を有する。
a. 被ばく線量のいかんに関わらず、後記の医療被ばくを除く、追加被ばくを本人の承諾なしに受けた場合には、核被害者(ヒバクシャ)として認められるべきである。多くの場合、正確な個人被ばく線量の推定は困難であるので、核被害地域に居たり、入域したり、放射性降下物(フォールアウト)を受けたという状況証拠があれば核被害者として認められるべきである。
b. ヒバクシャは、自らの被ばくの推定線量を知る権利を有する。
c. ヒバクシャは、自らの被ばくが、自らの肉体的、遺伝的、心理的健康に与える影響について、正確な情報及び知識を得る権利を有する。
d. 関連する情報の公開を請求する権利。 放射線の安全に関する情報については、人と将来世代の生命と身体に影響を及ぼすため、生きる権利を行使することに影響するものであるから、国家や軍・核産業の利益をこれに優先させてはならず、全ての者が情報公開を請求することができる。
e. リスクに関する情報を得る権利。 一般人が許容被ばく線量を受けた場合の死亡率や障害発生率などのリスクが公表されなければならない。
f. 被ばくによる人の健康と環境への影響を評価する知識と経験を持つ独立した科学者及び専門家に助言を求める権利。
g. 将来の被ばくを最小限に抑えるためのリスク低減政策や放射線防護政策を求める権利。
h. 持続的な健康診断と最善の医療の提供を、放射線被ばくによって引き起こされる可能性のある全ての疾病について自己負担なく受ける権利の保障。疾病は、がん・白血病などの悪性疾患に限定されず、非ガン疾患も含まれる。
i. すべてのヒバクシャは、その放射線障害によってもたらされる各種の疾病を予防するための最良の措置を受ける権利を有する。
j. 放射線被ばくと疾病の関連の有無を証明する義務は加害者にある。加害者は被害者の疾病について「被ばくと関係ない」ことを証明できないならば補償すべきである。
k. 予防原則に基づき、いかなる低線量被ばくであっても線量に応じた晩発性障害のリスクがあることを認め、放射線被ばくと被害者の健康障害の間に因果関係が推定されるとの法原則を確立しなければならない。
l. 放射線被ばくによる晩発性障害、遺伝的障害については、時間の経過は賠償を求める権利に影響を及ぼさない。加害者は時効を主張してはならない。
m. 核施設(原発やウラン関連施設を含む)において環境中に大量の放射性物質が放出された事故が起こった場合、政府は以下を認めなければならない。
● 電離放射線を含む有害物質による被ばくから保護するための予防と防護対策を受ける権利、避難者・移住者のための避難の権利と、環境汚染による⽣業の喪失への補償、⽣活再建への⽀援、コミュニティ全体の崩壊、⽣活・⽂化全体への被害の補償を受ける権利。
● 家族は社会の自然かつ基本的な集団単位であり、社会と国家による保護を受ける権利がある。子ども・胎児・妊婦への特別な配慮が必要である。放射線被ばくのリスクを十分理解した上で、家族や親戚を救出するために行動する者を誰も止めてはならない。
● 汚染した地域の住⺠・帰還者のための被ばく防護のための施策や治療を受ける権利。それを保障するための食糧と飲料 水、健康・医療、住居、教育・情報、保養の提供などを含む。
n. 核被災地の住民の権利を保障するための、各国の「補償法」を確立し、強化すること。
o. 放射能汚染地域からの避難・移住の権利と、自発的に安全かつ尊厳をもって帰還または他の場所への定住の選択を確実に行使できることを保障すること。
p. 国連憲章および主要な国際文書および関連する地域、国内、地方の文書に基づく権利は、無国籍者または難民の人々を含む全ての人々が、核被害によって避難した場合に保障されなければならない。
• 核被災地から避難した国内避難民に対しては、指示による避難者・自主避難者を問わず、平等な条件で支援と補償を受ける権利と、国際基準である国内避難に関する指導原則を適用しなければならない。これを国の法律または地方の条例,および行政における規則等に反映させることが推奨される。
• 避難民には帰還や別の土地への再定住,家族やコミュニティの再統合に関連する政策に基づく計画の決定プロセスに参加する権利が保障されるべきである。
8. 医療被曝について
a. 全ての人は医療被曝を必要最⼩限にとどめる権利を有する。
b. 被曝による健康リスクと患者の⽣命・健康を守るという患者にとっての利益を⼗分に説明した上で、患者⾃⾝が選択できる権利を有する。(インフォームドコンセント)
c. 患者と医療従事者の被曝被害を防ぐため、放射線被曝や低線量被曝について、医学教育と医療者への再教育(研修)が必要である。
d. 健診業者や私的医療機関の経済的利益を優先させない。
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作業部会有志(五十音別)
● 安在尚人 NPO法人世界ヒバクシャ展事務局長
● 井上まり 世界核被害者フォーラム共同代表、核の無い世界のためのマンハッタン・プロジェクト共同創始者、ニューヨーク州弁護士
● 海渡雄一 弁護士、脱原発弁護団全国連絡会共同代表
● 川野ゆきよ 世界核被害者フォーラム事務局次長、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)運営委員
● 清水浩 韓国の原爆被害者を救援する市民の会広島支部
● 藤元康之 世界核被害者フォーラム事務局長・核兵器廃絶をめざすヒロシマの会
(HANWA)事務局長
● 振津かつみ チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西・共同代表、医師
● 森瀧春子 世界核被害者フォーラム共同代表、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会
(HANWA)共同代表
● 森松明希子 東日本大震災避難者の会Thanks&Dream(サンドリ)代表、原発賠償関西訴訟原告団代表
● 籔井和夫 広島市在住ジャーナリスト、日本平和学会
<フォーラムを終えて>
被爆者運動や核廃絶運動を牽引してきた被爆者らから学び、核権力による加害の非人道性と違法性、核政策と被ばくの暴力性を社会が認識しなければ、核廃絶は実現しません。核権力や植民地主義に闘い挑む核被害者たちが他の核被災地と繋がり、支援者と連帯しながら核被害の実態を訴え続けることは重要です。世界の核廃絶運動の中心的な役割を核被害者が担い、核被害者の権利と補償の確立と、核なき未来実現に向けて活動を続けてほしいと切に願います。
2025年10月6日 世界核被害者フォーラム 2日目
このクラウドファンディングサイトを見ていただくと、世界核被害者フォーラムの概略がわかります。
<事前報道>
〇2025/912 RCCテレビ
「世界の核被害者が広島に集結してフォーラム 10月5・6日広島市で開催」記者会見のニュース
〇2025/921 毎日新聞
〇2025/9/29 中国新聞特集
原爆・核実験・原発事故・ウラン採掘… 世界の核被害 実態は 広島で5・6日 当事者集うフォーラム |
〇2025/10/2 朝日新聞
「グローバルヒバクシャ」広島から発信へ 提唱の女性が病身押す理由 [広島県]:朝日新聞
〇2025/10/4 読売新聞
<原爆>だけじゃない、様々な放射線被害者たち…世界核被害者フォーラムが10年ぶりに開催 主催者に聞く:地域ニュース : 読売新聞
〇2025/10/5 毎日新聞
世界核被害者フォーラム:多様な核被害、発信 ウラン鉱山跡、放射能汚染 被爆80年、広島でフォーラム | 毎日新聞
<事後報道>
〇2025/10/6 中国新聞
核被害者 連帯を確認 世界フォーラム開幕 広島で きょうまで | 中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター
「声合わせ 核被害根絶へ」 広島で世界フォーラム 植民地主義や健康問題指摘 | 中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター
〇2025/10/6 朝日新聞
「核の被害、いつも弱者が」 世界のヒバクシャら、広島の地から発信 [広島県]:朝日新聞
〇2025/10/6 読売新聞
世界の核被害者が実態訴え…10年ぶり広島でフォーラム:地域ニュース : 読売新聞
〇2025/10/7 中国新聞
「核と人類 共存できぬ」 広島宣言など採択 世界フォーラム閉幕 | 中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター
世界から核の汚染はなくせる セッションで6ヵ国10人が討論 | 中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター
〇2025/10/7 朝日新聞
核戦争なくてもヒバクシャに 各地の事例報告、被害者フォーラム閉幕 [広島県]:朝日新聞
〇2025/10/8 中国新聞 社説
社説 核被害者フォーラム 民の力で「核権力」包囲を | 中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター
〇2025/10/30 中国新聞 「潮流」
〇2025/10/26 朝日新聞 社説
〇2025/11/3 中国新聞
核被害者の補償 責任追及と両立を 世界フォーラムで「権利宣言」採択 まとめ役の井上まりさんに聞く
〇2025/11/4 東京新聞 こちら特捜部
広島・長崎への原爆投下から80年…「世界核被害者フォーラム」を開いた87歳女性を支える「父の言葉」:東京新聞デジタル
〇2025/12/23~25 毎日新聞
世界フォーラムより | 毎日新聞
世界フォーラム㊤ 「核被害 抗議の声に連帯」 「被写体の痛み忘れない」インド在住ビルリさん
世界フォーラム㊥ 「被ばく知らされぬ船員たち」 「国の放置 実態知って」 ビキニ事件の遺族 下本さん
世界フォーラム㊦ 「原発事故 子の心に影響」 「内部被ばく危険性理解を」福島の教諭 菊池さん
前日から来広された海外・国内ゲストをお迎えするレセプション。オープニングは、関洋さん率いる「ゆがふやー」による三線演奏。歓迎のあいさつは、元広島市長秋葉忠利さん。反戦反核の強い思いを語ってくれました。その後、海外ゲストの紹介と食事や交流。10年前のフォーラムにも参加した核被害者との再会、メールでしか連絡していない海外ゲストとの顔合わせ。あっという間に過ぎ去った90分でした。
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