宮崎園子 田村和之 金子哲夫 本田博利
向井均 橋本和正 渡部久仁子 湯浅正恵
2024年12月7日発行 西日本出版社 1,700円
イスラエルのガザ侵攻が始まった2023年、「平和都市・広島」では、その足元を大きく揺るがすいくつもの「事件」が起きました。
まずは2月、広島市教委が、故・中沢啓治さんの『はだしのゲン』を、小学校の平和学習教材から削除したことが、地元紙の報道によって明らかになりました。中学校の平和学習教材からは、アメリカの核実験により、太平洋を航行中の日本のマグロ漁船、第五福竜丸などが被曝したビキニ事件(ブラボー実験)の記述が消えました。
5月には、広島1区選出の岸田文雄総理大臣(当時)が議長を務めた広島開催のG7サミットにおいて、主要7カ国と欧州連合が、「広島ビジョン」の名の下、核抑止力を肯定する内容の共同声明を発出しました。
今、「平和都市」広島で何が起きているのか。
広島が訴えてきた「平和」とは何なのか。
混沌とした世界の中で、広島はこの先、どんな役割を担おうとしているのでしょうか。
一連の出来事を受けて、この地で平和活動をさまざまな形で展開してきた市民たちは、大きな疑念を抱き始めました。広島はいつから、こうなってしまったのだろうか。それを考えるとき、実は大きな転換点が近年あったことに気付かされます。
それは、広島市議会初の政策条例として2021年6月に成立した、広島市平和推進基本条例です。一部の市民は、その成立過程を見守り、条例の文言をつぶさに検討し、問題提起をしてきました。本書の執筆陣は、その一部です。研究者、元広島市職員、元国会議員、市民活動家、記者など、職業も世代も様々です。しかし、広島がこの先もヒロシマであり続けるのだろうか、という問題意識を共有する仲間として、私たちは「平和推進条例検証会」なる会合を立ち上げ、定期的に集って論議を重ねてきました。情報公開請求によって公文書を入手し、その制定過程を検証するのが主な目的でした。この条例から透けて見えるものは何か。本書は、この間の論議を踏まえて、メンバーがそれぞれの領域に寄せて執筆した論考をまとめたものです。
鎌田七男 宮崎園子
2025年7月18日発行 朝日新聞出版 2090 円
鎌田七男さん(広島大学名誉教授)は、放射線が人体に及ぼす影響、つまり白血病の染色体研究で世界的に有名です。また、原爆投下時に爆心地から500メートル圏内で奇跡的に生き残った78人の追跡調査を続けていることでも、知られています。
今では78人のうち存命の方は、ただ1人になってしまいましたが、その方と原爆投下80年目の8月6日放送「NHKスペシャル」にも出演。60年余も原爆の非人道性を立証してきた研究者・医師なのです。
鎌田さんの「思い」の全てを表現した宮崎園子さんは、広島県出身の元朝日新聞記者です。核兵器によって大切なものを奪われ、いつまでも放射線の恐怖にさらされている人たち。身体だけでなく精神的な苦しみも続く――。
その苦難を鎌田さんはこう表現します。
「生涯虐待」
被爆者が少なくなり、皆の記憶が薄くなっていくのではないか。このような現状を憂い、88歳の著者・鎌田さんは訴えます。
この本は、著者から次世代へ向けた「魂のメッセージ」です。
瀬戸麻由 高垣慶太 執筆
2026年1月22日発行 頒価500円
「2022年6月にウィーンで行われた核兵器禁止条約の第1回締約国会議に参加した私たちは、広島・長崎に限らない世界各地の核被害地域の人々が会議の中で大きな役割を果たし、若い世代も当事者意識を持って発言する様子を目の当たりにしました。国連の会議場を出てすぐの階段で、せっかく出会えた彼らとのつながりを活かしながら、学び続ける方法はないかとアイデアを出し合いました。・・・
国境を越える核被害の影響について、過去から現在に至るまでさまざまな視点で、人とのつながりを活かしながら語る場となってきたユースセッション。この内容を、より多くの人と共有し、形に残したいと思い、この度のブックレット発行に至りました。」(『世界のヒバクシャと出会うユースセッションについて』より)
このブックレットを発行するにあたって、ユースセッションのコーディネーターを務めている瀬戸麻由さんと高垣慶太さんは、このように述べています。
レポートは、主に5つの地域についてまとめられています。
① マーシャル諸島 ②ほか太平洋地域 ③福島 ④カザフスタン ⑤米国
若い世代がこの3年間に出会った世界の核被害者から学んだこと、その想いがぎっしりと詰まった一冊です。
<問い合わせ先> https://youth4hibakusha.mystrikingly.com/#contact-us
金栄鎬 井上康浩 編
2025年12月20日発行 人文書院 3800円
「未来に向けて今、核廃絶を求めて声を上げなければならない。これまであったはずの世界の良識は消えつつあり、力が支配する野蛮時代にもどっているかのような無力感に襲われる。核の使用はもちろん恫喝もタブーだと考えられた時代があったことを遠い昔のように痛み感じる。腰にぶらさげた拳銃(核兵器)をちらつかせ、いつでも撃ち放せるぞと言わんばかりの言葉が、一国の長や施政者の口から出てくるようになった。・・・・
核兵器は明白で、差し迫った、究極の危機だ。未来に向けて核廃絶を実現しなければならないし、そのために、わたしたち一人ひとりは声を上げることも、何かをすることもできる。繰り返しになるが、そのひとつが本書『原爆80年』である。」(序章より)
広島市立大学国際学部の研究者らが、哲学・思想、平和構築、日米関係研究、社会学、メディア論グローバル・ヒバクシャ研究、政治学、国際関係論、国際法など幅広い専門分野に立脚して10章に著した意欲的な書籍である。
その中でも、第1章は「森滝市郎の軌跡が問いかけているものー非核・非戦の未来に向けて」と題して、HANWA運営委員でもある嘉指信雄氏が執筆している。ぜひご一読を。
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